認知症の世界を共に感じる

現場にいた時のお話です。

夜勤中に突然、｢助けて～｣と叫び声が。

急いで居室に行き、ドアを開けようとしましたが開かない！！

｢Aさん！どうしました？大丈夫ですか？｣と声をかけると、

｢助けて！気持ち悪い！壁中に虫がいる！｣とのこと。

助けたいが、開かない…

(家具を入口に移動させ、開かないようにしていました)

少し力強くドアを引くと開けることができましたが、居室に入ると虫は一匹もいませんでした。

｢虫はどこですか？｣と聞くと、興奮気味に壁を指差し｢いっぱいいるじゃない！どうにかしてー！はぁ…はぁ…｣と背中には汗もびっしょりかいていました。

すぐに私は、｢ほんとだ！！！大変！！！部屋を出ましょう！急いで急いで！｣と居室から出ていただき、リビングの椅子へと誘導しました。

そして｢殺虫剤持って来ます！｣と走り、その足でAさんの荒れた部屋を整頓し現状復帰。

もう落ち着いたかな？と思う良きタイミングでリビングに戻るとAさんは、｢もうみなさん休まれましたか？｣と穏やかになっていました。

｢そうですね。Aさんの着替えも準備しておきましたよ～。｣と、汗をかいていたので着替えも誘導すると、

｢悪いわね、いつもありがとう｣と居室に戻られました。

Aさんに見えた虫は、どんな虫なのかはわかりませんが、汗をかき、息が上がるほどの恐怖体験をしているのだと思い、Aさんの見える世界に共感する対応をしました。

｢虫なんかいませんよ｣

｢大きな声出さないで下さい｣

そんな対応をしたら、不安や恐怖を助長させてしまったでしょう。

なぜならAさんには、はっきり虫が見えているのですから。

認知症の方が今、どのような世界にいて何を感じているのか、私達が理解しようとしなければ、永遠に介護者主体です。

利用者に見える景色を理解し、共感できる介護福祉職になりたいものです。

介護の仕事は奥が深いですね。

今回は私の体験談であり、また、当時を生きた利用者と私の関係から生まれた場面ですので、全ての方に当てはまるものではありませんが、参考にしていただけたら幸いです。

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